1.腸の力

■腸内環境を整える

「腸内細菌とともに人は進化してきた」といわれます。

腸内細菌といかに共生していくかが、健康レベルを向上させる、または維持するポイントとなります。

食事やサプリメントの取り方に気を付けなければいけないのですが、昔ながらの食事のとり方が、腸内環境を整えるうえで大いに貢献してくれます。

便秘とか下痢をしないようにするというだけではなくて、腸の健康が全身の健康につながっています。腸には、さまざまな病気を予防し、若さと健康を維持する働きがあります。腸内環境を整えることは、健康を維持する有効な方法といえます。

■腸の力

「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」のバランスはどうなっているのでしょうか。何を食べるとどんな菌が増えて、それが健康にどのような影響を与えるのでしょうか。

善玉菌の代表はビフィズス菌です。乳酸菌(ビフィズス菌も乳酸菌の仲間といえます)は腸内を酸性に保ちます。すると悪玉菌の増殖が抑えられます。

通常の乳酸菌は発酵する過程で乳酸を生成します。

ビフィズス菌は乳酸のほかにも殺菌力の高い酢酸を生成します。

いろいろな乳酸菌がいますが、ヒトの腸内で優勢になるのはビフィズス菌です。

ビフィズス菌はY字状になっています。

(上から「乳酸桿菌」「ビフィズス菌」 「乳酸球菌」、一般社団法人JミルクHPから引用)

腸は、消化吸収を担う小腸と排泄を担う大腸に、おおざっぱに分けることができます。

腸内細菌のことで問題となるのは大腸です。

★ヒトの腸内にいる代表的な5つのビフィズス菌

(人の腸内からは10種類のビフィズス菌が同定されています)

  • ビフィドバクテリウムビフィダム

胃の健康に効果的なビフィズス菌です。胃の粘膜物質であるムチンへ接着し、胃の粘膜を保護してくれます。また、胃の粘膜に棲息するピロリ菌を抑制することもでき、胃潰瘍や胃がん、胃炎といった胃の病気を予防することも可能です。

善玉菌として腸内環境を整えてくれます。胃酸にも強く、しっかり腸へ届きます。

  • ビフィドバクテリウムロンガム

ビフィドバクテリウムロンガムは、日本人の腸に常在しているビフィズス菌の一種です。酸に強いため胃酸で死菌することのない腸まで届きます。整腸作用やビタミンB群の生成、免疫力の向上に寄与します。

  • ビフィドバクテリウムアドレッセンティス

人の大腸や膣に棲息し、動脈硬化の予防に効果的な働きをします。HDLコレステロールを増やし、余分なコレステロールを排除します。

  • ビフィドバクテリウムブレーベ

ヤクルト菌の一種として知られるビフィドバクテリウムブレーベは、アレルギー症状の改善に効果的なビフィズス菌として知られています。ビフィドバクテリウムブレーベの腸内量を増やすと、アレルギー症状が出にくくなるという実験結果が報告されています。また、ビフィドバクテリウムブレーベは、がんの発生防止にも効果的といわれています。

  • ビフィドバクテリウムインファンティス

ビフィズス菌の基準種とされるのが、ビフィドバクテリウムインファンティスです。ビフィドバクテリウムインファンティスは善玉菌として腸内環境を整えるのはもちろん、花粉症などのアレルギーを抑制することも可能です。整腸効果により便秘や下痢の改善はもちろんのこと、腸管出血性大腸菌による疾患の予防にも効果的です。

   (★の記事は「フジッコ」HPを参考にした)

■免疫の中心は小腸

小腸は内側にたくさんのひだ(粘膜)があり、それを全部広げるとテニスコートの1面分(300㎡)あるとか、人によっては30㎡くらいだとかいわれています。30㎡でも5.5m×5.5mですから結構な広さです。8畳以上は優にあります。

胃で溶かされた食べ物は、小腸でさらに消化され粘膜から栄養素が取り込まれます。その際、誤って病原菌も一緒に取り込んでしまわないようにしなければなりません。その役目を担っているのが免疫細胞です。

免疫細胞には、マクロファージ、樹状細胞、リンパ球、好中球などがあり役割分担しています。

小腸には白血球の60%が集まってきています。体内に入ってきた異物(病原菌)を殺傷するためです。腸は免疫の中心といえます。よく「腸管免疫」といいます。

大腸には腸内細菌のコロニーができています。

60㎏の人で1.0から1.5㎏の重さがあります。大腸にいる細菌は小腸で吸収しなかった栄養素をエサにしています。

乳酸菌に相性の良いエサは糖で、特にビフィズス菌にとってはオリゴ糖がよい餌になります。

悪玉菌には悪玉菌の好きなエサがあります。そのエサが増えなければ悪玉菌は増えないということになります。

■発酵と腐敗

善玉菌がえさを分解する過程は「発酵」と呼ばれ、悪玉菌がえさを分解する過程を「腐敗」と呼びます。発酵とは人にとって有用な作用、反対に腐敗が有害な作用ということになります。

腐敗は特にタンパク質を分解する過程のことで、アミン、インドール、スカトール、フェノールなどの有害物質が生成されます。これらは匂いのもとになったり、発がん物質を生成したりします。

腸内で腐敗が進むと、便秘になったり下痢をしたりします。便も臭くなりますが、有害物質が血液に乗って全身を回ります。肌が荒れたり、ひどいときには体臭も臭くなったりします。

腸内環境を善玉菌優位に持っていかないと老化の進行も早くなり病気にもなりやすくなります。

・善玉菌 ― 糖をエサにして発酵をする

・悪玉菌 ― タンパク質をエサにして腐敗を促す

ということですが、糖の過剰摂取は血糖値をあげてしまいますし、タンパク質は筋肉やホルモンの生成に寄与しますので、両者をバランスよく摂取することが大事になってきます。

■腸内フローラ

腸内細菌のバランスは、どのくらいが適当なのか。2割を善玉菌にすれば良好な環境を保てるようです。すべてを善玉菌にする必要はないのです。

善玉菌:悪玉菌:日和見菌 = 2:1:7 

くらいの割合が良いそうです。

また、腸の働きは体の状態(例えば、きついトレーニングをしているなど)だけではなくて、感情(気持ち)の持ちようにも影響されることがわかってきています。

2.腸内細菌を育てる

■乳酸発酵

乳酸菌は発酵すると乳酸を生成します。

C6H12O6 → 2CH3CH(OH)COOH これが基本です。

1個のブドウ糖から無酸素で2個の乳酸を作ります。

実際には、乳酸菌の種類や環境によって、このほかにもいろいろな物質を生成します。

乳酸菌の一種であるビフィズス菌も乳酸を作りますが、それ以外に「酢酸」「葉酸」を作ります。

酢酸は殺菌力が強いので悪玉菌をやっつけ増殖を抑える働きがあります。ここが、ビフィズス菌と他の乳酸菌(乳酸桿菌、乳酸球菌)と違うところです。

■ビフィズス菌の働き

ビフィズス菌(善玉菌)が腸内フローラの2割を占めていれば、腸内が酸性に保たれ環境の改善につながり、健康に寄与するわけです。

ビフィズス菌は「ビフィドバクテリウム属」に属する乳酸菌で約30種類ほどが確認されており、そのうち人の腸内にでは10種が確認されています。

ビフィズス菌の働きとして、注目すべきは腸の蠕動を促すことです。蠕動が盛んだと腸内での食物の移動がスムーズになりますので、便通がよくなります。また、ビフィズス菌はビタミンB群、ビタミンKなどの物質も生成します。

ビタミンB群はエネルギー代謝に必要なものです。特にビタミンB1が欠乏すると脚気を引き起こします。

味噌や漬物などの発酵食品は体に良いとされていますが、発酵する過程でビタミンやアミノ酸が生成され栄養が増すし、それを日常的にとることにより腸内のビフィズス菌に働きかけ腸内フローラを安定させる効果があります。

■日和見菌

善玉でも悪玉でもない細菌ですが、環境が良い方向に傾くとよい働きをし、環境が悪化してくると悪い働きをする傾向があります。

理想的な腸内では、腸内細菌の1割は悪玉ですが、それが増えてくると日和見菌も悪玉化してくるということです。7割が日和見菌ですから、それも味方につけたいものです。

■悪玉菌

悪玉菌の中での凶悪なのがウェルシュ菌です。肉食動物の腸内に多い菌ですが、腸内にある食べカスを腐敗させて、硫化水素やアンモニアなどの腐敗物質を生み、ガスや悪臭のもととなる物質を作りだします。その結果、便秘、下痢、アレルギー症状を引き起こします。潰瘍性大腸炎にも関係しているといわれます。

大腸菌も悪玉菌のひとつですが、ビタミンB群やビタミンKを合成したり、感染症を防御したりもします。増えすぎなければ有用な面もあるのです。増えすぎるとやはり腸内腐敗を引き起こします。

■加齢と悪玉菌

加齢とともに悪玉菌は増えていく傾向にありあります。若いころはバランスが少々崩れても少し節制すれば元に戻りますが。年を取ってくると、そうはいきません。

腸内腐敗が慢性化すると老化を早めます。

食べ物がどのような影響を腸内細菌に与えるかを考えながら取っていくのが大事ということになります。腸内細菌とうまく付き合っていくことが、年をとっても若々しく元気を保つ秘訣といえます。

■抗生剤と腸内フローラ

疾病が進んでくると、病院から抗生剤を投与されることがあります。悪い細菌をやっつけるための有効な手段ですが、抗生剤は良い菌も駆逐してしまいます。ですので、抗生剤を取ると、腸内フローラも乱れてしまいます。急性の病状を抑えるには有効ですが、使い過ぎは禁物です。

耐性のついた細菌も生み出されてきて、抗生剤の進化と耐性菌のいたちごっこになっている側面があります。

何はともあれ、腸内細菌とうまく付き合っていくことが年をとっても若々しく元気を保つ最大の秘訣といってもよいでしょう。

3.腸内フローラを整える

■腸内細菌と加齢

下のグラフをご覧ください。人は生まれてくると、空気に触れますので、腸内は酸素量が一気に増えます。すると好気性の大腸菌、大腸球菌が一気に増殖します。

その後、腸内は酸素がなくなりますので、嫌気性の細菌が増えることになり、特にビフィズス菌が大量に増殖し、生後4日から7日には腸内細菌の95%がビフィズス菌で満たされることになります。

ビフィズス菌優位の状態は離乳期まで続きます。食事を始めると、その割合は減っていき2割程度に落ち着きますその代わりに日和見菌が増えてきます。

(バイオジェニックス研究会HPより引用)

ビフィズス菌(善玉菌)の割合が2割くらいをキープしていれば、腸内環境は良好です。

しかし中年以降は注意が必要です。食生活に無頓着だと、腸内の環境は悪化し悪玉菌が増え腐敗が進んでいきます。そして老化が一気に進むことになります。

加齢とともに悪玉菌が増えていくということを認識して、それまで以上に食事に気を使わないといけないということです。

ちなみに、母乳にはビフィズス菌の増殖を促す物質(ビフィズス因子)が含まれています。粉ミルクの赤ちゃんよりも母乳の赤ちゃんのほうがビフィズス菌は多く、悪玉菌の増殖が抑えられている、ということです。

■腸内フローラとがん

腸活には食物繊維を取るのが有効です。食物繊維はビフィズス菌のエサになり、便通を良くし悪玉菌の増殖を防ぐことで腸内フローラを整えます。

がん患者の腸内の細菌を調べると、善玉菌は少なくなっており、がんの部位によっても悪玉菌の種類・割合に違いがあります。

酢酸、プロピオン酸、酪酸などを「短鎖脂肪酸」といいます。ビフィズス菌などの有益な腸内細菌は、オリゴ糖や食物繊維を発酵して、短鎖脂肪酸を作ります。特に、短鎖脂肪酸のなかでも酢酸には悪玉菌を退治する殺菌作用や、増殖を抑える静菌作用があることで知られています。ビフィズス菌などの有益な腸内細菌を増やせば、短鎖脂肪酸が増加し、腸からからだを元気にしてくれるのです。

■腸内細菌学

腸内細菌の種類や構成と健康状態について総合的に見てこうとするのが腸内細菌学です。1980年代くらいから徐々に体系が整ってきたそうです。

腸内フローラの構成には、その人の健康状態、精神状態、病気の内容が反映されていると考えられています。

<腸内細菌の有用性> → 健康維持につながる

・ビタミン合成

・消化・吸収

・感染防御

・免疫刺激

<腸内細菌の有害性> → 下痢・便秘、発育障害、肝臓障害、動脈硬化、高血圧、がん、

             自己免疫疾患、免疫抑制につながる

・腸内腐敗

・細菌毒素

・発がん物質の産生

(上の図1と同じサイトから引用・改変)

上の図は、腸内細菌を有用性、有害性、病原性の3つの側面から見て、それぞれの菌がどのような影響を人の健康に与えているのかを示したものです。

図の上にいる「バクテロイデス」属、「ユウバクテリウム」は日和見菌の仲間です。「嫌気性連鎖球菌」も日和見菌の仲間で口腔内から腸に多数存在しています。

腸球菌の類も病原性の低い日和見菌です。日和見菌は共生性が高く、普段人に対して無害ですが、腸内細菌のバランスが崩れて環境が悪くなってくると、悪玉菌のように振舞います。

バクテロイデスを見ると、有用性としてビタミン合成や感染防御の働きがありますが、腸内腐敗や発がん物質の産生にも関与し、病原性も有しています。病原性にも線が伸びているのは、日和見感染に関与するためです。

※健康な人であれば病気にはならない菌(日和見菌)も多く存在し、この日和見菌によって起こる感染症を日和見感染と言います。「バクテロイデス」に感染すると敗血症や腹膜炎に至ることがあります。

「緑膿菌」は水回りによくいる菌ですが、通常は感染しません。もし感染すると肺炎や尿路感染症を引き起こします。

下のほうに書かれている菌は悪玉菌です。有害性か病原性しかありません。しかし、前にも触れましたが、中段にいる大腸菌は有用性のある大腸菌もいれば有害性・病原性のある大腸菌もいるということになります。非常に多くの株が存在します。無害なものから悪いものまで。出血性大腸菌(O157)などが激烈な病原性を有します。

腸内細菌と健康や病気とのかかわりを見ると、腸内フローラを適正に保つことが大切だとわかります。

まとめとして、2点