人は多くの微生物とともに生きてきました。

納豆、しょうゆ、かつお節など微生物を利用した食品は数多くあります。

外国ではパンやチーズ、ヨーグルトづくりに微生物を利用してきました。

いいことばかりではありません。微生物の中には、人の体に侵入して病気を引き起こすものもいます。人間の歴史のなかでも、ペストや天然痘、スペイン風邪(インフルエンザ)など、病原性の微生物が感染し大勢の人間が亡くなってきました。

現在でも、エイズやエボラ出血熱、炭疽菌など微生物との戦いは続いています。

人の皮膚などの体表面にもいろいろな微生物が棲んでいます。主に細菌類(「常在細菌」といいます。)が住んでいますが、耳穴や耳のウラには例外的に、多くの菌類が生息しています。またウイルスは鼻の穴や小鼻のあたりに多くみられます。

ニキビの原因となるアクネ菌は嫌気性菌なので、酸素のある環境ではほとんど増殖できません。そのため、酸素の少ない毛穴や皮脂腺に存在し、皮脂を餌にプロピオン酸や脂肪酸を産生します。そのため皮膚表面は弱酸性に保たれます。結果、皮膚に付着する病原性の強い細菌の増殖を抑える効果を発揮しています。よい働きをしているわけです。

しかし、皮脂の分泌量が増えたり、何かの異常で毛穴をふさいだりすると、アクネ菌が過剰に増殖し炎症を引き起こしてニキビになってしまいます。

表皮ブドウ球菌も皮膚表面や毛穴に存在しています。表皮ブドウ球菌は汗(アルカリ性)や皮脂を餌にグリセリンや脂肪酸を作り出します。脂肪酸は肌を弱酸性に保ち、抗菌ペプチドを作り出すことで、黄色ブドウ球菌の増殖を防ぎます。また、グリセリンは、皮膚のバリア機能に寄与しています。

黄色ブドウ球菌も、皮膚表面や毛穴に存在します。存在しているだけでは問題がありませんが、ブドウ球菌の中では病原性が高いため皮膚がアルカリ性に傾くと増殖して皮膚炎などを引き起こします。傷を受けた皮膚をそのままにしておくと化膿し悪化させてしまいます。

さて、体内を見ると、消化吸収機能をつかさどる消化管には1,000種、100兆個の微生物(主として細菌)が棲んでいると言われています。

よく「腸内フローラ」といいますが、フローラとは植物群集という意味で、腸内に存在する無数の微生物のようすは、あたかも花畑のように見えるためこのように呼ばれています。

腸内細菌はその働きから身体に良いものを「善玉菌」、悪いものを「悪玉菌」、良いとも悪いともいえないものを「日和見菌」と呼んでいます。

善玉菌の代表は乳酸菌やビフィズス菌などで、悪玉菌は大腸菌やウェルシュ菌などが代表に挙げられます。

腸の調子は善玉菌や悪玉菌などの腸内環境でのバランスによって左右されます。腸内環境のバランスが整っている時は快調で、スッキリと排便できます。しかし、加齢や食事を含む生活習慣の乱れ、大きなストレスなどによって腸内環境のバランスが崩れてしまうと、便秘や下痢、おなかのハリ、きつい便臭など、さまざまな症状が現れ体調全体が不全となってきます。

腸内に存在する菌の数や種類、バランスは人それぞれ異なっています。つまり、腸内環境も、表皮の細菌類と同様に、一人ひとり違っているのです。

最近の研究では、排便に関することだけでなく、肥満、免疫機能、抗酸化作用などにも、腸内環境が関係していることが明らかになってきています。

腸内フローラを形成する微生物が、消化吸収、免疫体系、神経系などに大きな影響を与えています。