肥満症とメタボリックシンドロームは同じようなものというイメージがあります。確かに重なる部分もありますが、正確には違います。
日々の生活で気を付けることは同じですが、それぞれの内容を解説します。

1.肥満症

まず「肥満」というのは単に太っているということです。太っているだけで病気ではありません。体脂肪がたくさんついている状態ということです。
肥満かどうかを判定するには、CTスキャンで測定することが正確でいいのですが、病院以外で簡単にできるものではありませんので、一般にはBMI(Body Mass Index)が広く使われています。

BMIが25を超えたあたりから日本では「肥満」といっています。それは、この数値を超えると耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常など)、脂質異常症、高血圧の人の割合がぐんと増えるからです。

そして、肥満症というのは、どちらかに該当していることをいいます。
・肥満に起因、関連する健康障害がある → フローチャート
または
・健康障害が予測されるくらい内臓脂肪が過剰に蓄積している → 内臓脂肪型肥満の判定手順

太っていて治療が必要な状態が「肥満症」ということです。
肥満は疾患ではありませんが、肥満症は疾患であり、医学的に治療が必要となります。

肥満症の判断基準となる合併症(表1)(日本肥満学会2011年)

1 耐糖能障害

2 脂質異常症

3 高血圧

4 高尿酸血症・痛風

5 冠動脈疾患

6 脳梗塞

7 脂肪肝

8 月経異常・妊娠合併症

9 睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群

10 整形外科的疾患(ひざや股関節の変形、変形性脊椎症、腰痛症)

11 肥満関連腎臓病

2.メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームとは、内臓肥満(内臓脂肪の蓄積)があり、血圧、脂質代謝異常、高血糖のうち2つ以上に異常を認める症候群のことをいいます。内臓脂肪症候群ともいいます。

 

2005年4月の日本内科学会総会にて発表された、日本のメタボリックシンドロームの診断基準には、次の記述があります。
「内臓脂肪型肥満は、臍レベル腹部断面での内臓脂肪面積100平方cm以上とする。
ただし内臓脂肪面積を直接測定することは健康診断や日常臨床の場では容易ではないため、腹囲の測定により代用し、男性85cm以上、女性90cm以上を内臓脂肪型肥満と診断する。しかし、できれば腹部CT撮影等により内臓脂肪面積を精密に測定することが好ましい。」

腹囲の測定は、「大体こんなもの」という感覚です。同じ腹囲でも内臓脂肪の蓄積には個人差がるからです。
基準値は世界各国で異なり、日本では日本人のデータに基づき平成17年(2005年)に次のように決められました。
繰り返しになりますが、ウエスト周囲径が基準値(男性85cm以上、女性90cm以上)を超え、血圧、脂質代謝異常、高血糖のうち2つ以上に該当する場合、メタボリックシンドロームと診断されます。

ウエストが男性85センチ、女性90センチということは、内臓脂肪が100平方センチメールあるということです。肥満症の基準と合致します。

メタボリックシンドロームになると、そうでない場合と比べて、2型糖尿病になるリスクが3~6倍、心血管疾患とそれによる死亡のリスクは1.5~2倍になると言われます。
さらに、非アルコール性脂肪肝、高尿酸血症、腎臓病、睡眠時無呼吸症候群といった疾病にもつながります。

自覚症状がなかなかありませんが、放置しておいてもよくはなりません。生活習慣病の基となる動脈硬化が進行していくことになります。適切な運動や食事療法による体重管理・血圧や血中脂質、血糖値のコントロールを行うことが必要です。

3.最適なBMI

BMIは身長に見合った体重を判断するための指数で、体脂肪率とよく相関することが知られています。大抵の人において適用することができますが、ボディービルダーのような筋肉質の人だと、「太りすぎ」とでてしまいますし、極端に筋肉が少なく体重は人並みの人などは「適正体重」とでますが、実は内臓脂肪型肥満だったりします。
BMIには限界がありますが、そこそこ使える指標として利用されています。

BMIの計算式は万国共通ですが、肥満の判定基準は国によって異なります。
日本は25を普通体重とそれ以上(過体重、肥満)に分ける境目としていますが、香港やシンガポールでは23を境目としています。アメリカでは30が境目となっています。

日本でのBMIの理想値は男女とも22前後であるといわれています(注1)。

「BMIと健診で異常値が出た検査数合計との関係」

この研究の対象者は30~59歳の中年男女で、若い人(18歳以上29歳まで)や高齢者(60歳以上)は含まれていません。また、この研究の検査項目は肺疾患、心疾患、上部消化管疾患、高血圧、腎疾患、肝疾患、脂質異常症、高尿酸血症、糖尿病、貧血の10項目を対象にしたものです。
これらの検査に最も引っかかりづらかったのが22あたりの人たちということです。
この10項目は、生活習慣病と重なる疾病が多く含まれますが、日本人の死亡率1位のがんは入っていません。

死亡率を指標にしたとき、最も死亡率の低いBMIはまた違った数値を示しています(注2)。
男性ではBMIが23以上25未満、女性では21以上23未満が最も脂肪率が低いという結果が出ています。これは40歳から59歳の日本人男女を10年間追跡調査したもので、調査委開始時のMBIを表したものです。
少し「小太り」に見えるくらいが長生きということになります。
やせすぎていても太りすぎていても死亡率は高くなります。

 

「BMIとその後の10年間における死亡率との関係」

 

40~79歳の日本人男性約3万人、女性約6万人の生死を10年間にわたって調べた研究結果がります(注3)。下の表です。

これによると、年代によって、死亡率の低いBMIが違うということがわかりました。

60歳以上の男性では、BMIが25を少し超えた群の死亡率が低く、逆に20を切っていると死亡率が上がっていました。

女性についても最も死亡率の低いBMIは60歳を超えると高くなっています。
つまり、歳をとると、太っているよりもやせているほうが危ないということです。

「日本人の食事摂取基準(2015年版)」(注4)では、年齢階層別の目標とするBMIを下の表のようにしています(注4)。

死亡率にかかわるのはBMIの数値だけではありません。生活習慣(飲酒、喫煙、運動)が広くかかわってきますので、広い視野をもって注視していく必要があります。

(注1)Tokunaga K,et al.ldeal body weight estimated from the body mass index with the lowest morbidity.lnt J Obes. 1991;15(1):1-5.
(注2)Tsugane S,et al.Under- and overweight impact on mortality among middle-aged Japanese men and women: a 10-y follow-up of JPHC study cohort I.Int J Obes Relat Metab Disord. 2002;26(4):529-37.
(注3)Matsuo T,et al. Age- and gender-specific BMI in terms of the lowest mortality in Japanese general population.Obesity. 2008;16(10):2348-55.
(注4)日本人の食事摂取基準〈2015年版〉佐々木 敏 (監修)、第一出版 (2014/8/1)