砂糖と脂肪は報酬系を強く刺激します。

人だけではなくマウスでもそうです。通常のえさを与えていると体重は一定に保たれます。つまり「恒常性の食欲」がうまく機能するのです。

しかし、砂糖や脂肪が多く含まれたえさを与えると、食べる量が次第に増えていき体重が増えていきます。「恒常性の食欲」の機能が狂ってくるのです。

この実験からマウスにも快楽性の食欲があることがわかります。人にとっても、砂糖と脂肪に対する指向性は高く、これが現代人の太る原因の大きな要素となっています。

砂糖の過剰摂取

WHO(世界保健機構)が2015年に発表した「成人及び子供たちの糖類の摂取に関するガイドライン」では、肥満や虫歯予防のために1日の摂取カロリーに占める糖類の割合は5%までにするとよいとされています。

サトウキビ

男性が1日2000㎉カロリーとすると、5%は100㎉です。100㎉は砂糖25グラムほどです。500㎖のスポーツドリンクには30gの砂糖が入っています。コーラではもっと多く入っています。

農水省で出している「砂糖及び異性化糖の需給見通し(平成30年9月)」によると、日本人は1人につき、1日当たり45.4gの砂糖と19gの異性化糖を消費していることになっています。日本人はWHOの推奨する基準を大きく上回っているのですが、この状態が50年以上にわたって続いています。

砂糖の取りすぎを防止するために砂糖の入った飲料に「砂糖税」をかけることをWHOでは推奨しており2011年にフランス、2014年にメキシコ、2017年にインドとタイ、2018年にイギリスとフィリピンで砂糖税が導入されています。

日本でも導入されるかもしれません。

脂肪の過剰摂取

農水省から出ている「食糧需給表」を見ると肉類の消費が年々増えてきています。魚介類、野菜、米の消費は年々減っています。

コメは50年前に比べると半分以下にまで減少しています。1962年、日本人1人当たりコメの消費量は118.3キロでした。その後は、坂道を転げ落ちるように減少し、2016年度には半減以下の54.4キロとなっています。

食の欧米化といわれて久しいですが、この変化が肥満やメタボリックシンドロームの患者数増加の原因となっていると考えられています。

糖やタンパク質に比べて脂肪は高いエネルギーを持っています。

糖・タンパク質1グラム当たり  4キロカロリー

脂質1グラム当たり 9キロカロリー

同じ量を食べても倍以上のカロリーを取ることになります。

また、意外なところで死亡を取っていることもあります。脂肪といえば肉類を思い浮かべますが、素材100g中にどのくらいの脂肪が含まれるかしました表です。

意外なものに脂肪が多く含まれている感じがします。きな粉には結構含まれています。ジャガイモはフライにすると、脂肪の含有量がグンと増えます。

脂肪に砂糖が加わると食欲がわいてきます。つまり報酬系が活発化して摂取を促し肥満化を助長します。

価格の面でも砂糖と食用油はカロリー単価が安くなっています。カロリー単価とは、単位カロリー当たりの価格のことです。

砂糖と油は食品として欠かせないものでもあり、かつ買いやすいので多く摂取してしまう傾向にあります。

野菜不足は体に悪いといわれますが、野菜に含まれる食物繊維は糖の吸収を緩やかにすることで血糖値の急激な上昇を防ぐ働きがあります。

また、抗酸化物質を多く含むため2型糖尿病や動脈硬化を防ぐ働きもあります。

ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEなどのビタミン類のほか、ポリフェノール、カロテノイドなどが抗酸化物質とみられています。

タンパク質は脂質や糖質よりも少ないエネルギーで満腹感を与えるとともに、満腹感が長持ちします。タンパク質は食後に体温を上昇させやすく消費エネルギーが増えることになります。

また、タンパク質にうまみ成分を加えると満腹効果が大きくなることも知られています。

タンパク源というと肉類を思い浮かべますが、農水省「食糧需給表(2017年)」によると、全摂取タンパク質のうち24%を穀類からとっています。穀類がトップで2位の肉類が21%です。

他にタンパク源として大豆がよくとられています。豆腐、納豆、醬油の原料として昔から使われていますし、健康食品としても知られています。

チーズやヨーグルトにも蛋白は多く含まれています。

太らない食べ方

肥満を避けるためには、栄養のバランスを考えて過度に食べないようにすることが大事

なのですが、行動や生活習慣に気を付けることも重要になってきます。

(1)早食いはしない

満腹感を感じる前に多量に食べすぎてしまいます。インスリンの分泌量が急上昇することが脂肪の蓄積につながります。また、早食いの人は柔らかくて食物繊維の少ないものを好んで食べる傾向にあることも、過食を促すことにつながっていきます。

(2)遅い夕食はとらない

強い空腹感のために食べ過ぎてしまう傾向にあります。残業で小腹がすいたとき、おにぎり1個でもほおばっておけば、家に帰ったとき軽く済ませることができます。

(3)睡眠不足にならない

睡眠時間の短い人はレプチンの濃度が低下しグレリンの濃度が上昇しています。そのため、食欲が高まりなおかつ満腹感が薄いため食べ過ぎてしまい、だんだん太っていくと考えられています。

長時間労働で就寝時刻が遅いときには高ストレス状態になっていると考えられます。高ストレスになると甘い物や脂肪分の高い物が欲しくなります。

(4)料理は小さめの皿に盛る

同じ量でも、小さ面お皿に盛ったほうが多く見えて食べる量が自然と少なくなります。

グラスは細長いものを使うと同じ効果が得られます。

肥満者の推移

厚労省の「国民健康・栄養調査」によると、肥満者(BMI≧25 kg/m2)の割合は男性 30.7%、女性 21.9%であり、この 10 年間でみると、男女とも有意な増減はみられません。

BMIが25というのは、それを超えたたりから内臓脂肪の蓄積が多く、健康に悪い影響が出てくるという境目でした。

国民健康・栄養調査より

上のグラフ 図16-1、図16-2は平成29年「国民健康・栄養調査」からの抜粋です。

グラフを見ると、26年ころから線が若干上向くになっているのがわかります。

ところが、日本人の平均摂取エネルギーは、食糧需給表によると減ってきています。

ということは、肥満者が増えているのは摂取エネルギーの増加ではなく消費エネルギーの減少ということができます。

消費エネルギーは、

・基礎代謝

・食事誘発性熱産生(消化吸収時の消費エネルギー)

・生活活動代謝(日常生活の中の消費エネルギー)

に大別することができます。

一般の人において、この3つの中で最も多いのは基礎代謝で約7割を占めています。

食事誘発性熱産生が1割くらい、生活活動代謝は2割くらいです。

基礎代謝は10代後半が最も高く、その後筋肉の衰えとともに減少していきます。

基礎代謝が低くなってくると脂肪が蓄積しやすくなってきて、肥満や生活習慣病を招く危険が高くなります。反対に、基礎代謝の高い人は、カロリーを摂ってもエネルギーとして消費されやすく脂肪が蓄積されないので、太りにくくなります。

基礎代謝は筋肉量に比例します。同じ体重でも脂肪が少なく筋肉量が多い人のほうが、基礎代謝は高くなります。

年齢がいってくると筋肉を増やすまたは維持することが重要です。

普段の生活の中で正しい姿勢で歩くだけでも結構効果があります。つらい筋トレなどは年齢にもよりますが、かえって体を壊す危険があります。

立っているだけでも思いのほか筋肉を使っています。しかし、座ったり寝転がったりしていては筋肉の使用量は著しく減ります。

基礎代謝や食事誘発性熱産生は、その人にとってそんなに大きく変わるものではありません。しかし、生活活動代謝は少し意識すれば大きく変えることができます。

太るのを防止するために必要なのは運動だけではありません。

座っている、または寝転がっている時間を減らしていくことが肥満防止につながります。日常生活の中で台所に立ったり、ものを整理したり、掃除をしたり、風呂を洗ったりなどしてこまめに動くことを意識すると効果が上がります。

運動する習慣のない人はこのような「非運動性熱生産」(Non-Exercise Activity Thermogenesis : NEAT)を高めるようにするとよいのです。

運動するときや体を動かすとき、筋肉を使います。ここでいう筋肉とは骨格筋のことです。

食事から摂取したブドウ糖の70%強をインスリンの働きで骨格筋に取り込んでいきます。

運動時にはインスリンの働きとは違った仕組みで骨格筋にブドウ糖が取り込まれます。

また、運動は、骨格筋におけるインスリン情報伝達経路を活性化してインスリン感受性を高め、筋細胞内への血糖の取り込みを促進することがわかっています(インスリン抵抗性の改善)。

そのため、肥満していてインスリン抵抗性が高くなっていても運動をすることによって血糖値を下げることができるのです。

さらに運動するとHDLが増加することが知られています。

HDLを増やす方法としては、運動実践、食事管理、内臓脂肪を減らす、禁煙などが有効と考えられていますが、これらの中で最もエビデンスレベル(科学的根拠)が高いのは運動です。また、運動すること自体が心臓や血管の刺激となるのでそれらの機能向上につながります。

MET’sとは

METs(メッツ)は「Metabolic  equivalents」の略で、活動・運動を行った時に安静状態の何倍の代謝(カロリー消費)をしているかを表しています。

安静時を1としたときの運動時のメッツ数を表しています。

身体活動MET’s表は下のリンク

http://www.nibiohn.go.jp/files/2011mets.pdf

メッツを利用して、消費カロリーを推定することができます。

消費カロリー(kcal)=メッツ×1.05×体重(kg)×運動時間(H)

例えば、通勤中の歩行は4.0メッツなので、50kgの人が往復40分行った場合、

4.0メッツ×1.05×50kg×0.66時間=138.6kcal

となり、通勤だけで138.6kcal消費することが分かります。

レコーディング・ダイエット

太るのには必ず理由があります。消費エネルギーよりも摂取エネルギーが多いのです。

「私はそんなに食べていないのに太る」という人もいますが、食べていることに無頓着なのです。

自分が食べたものを記録することで無自覚だった「食べ過ぎ」「間食」「栄養の偏り」などの太る原因を視覚化して自覚します。

食べ過ぎを事実として認識することで、「食べ過ぎてはいけない」という意識付けができます。

ステップ1(1週間)

食べものだけでなく飲み物についても、時刻、内容を記していきます。やせるための行動は不要。まずは自分の食について客観視してみます。

体重も毎日決まった時刻に計って記録します。

ステップ2(1週間)

食べたもののカロリーを調べてみます。どんな食べ物がカロリーが高いのかを知り、カロリーを抑える食べ方について考えてみます。

ステップ3(5日間)

カロリー制限をしてみる。1500㎉くらいを目途にする。1000㎉を切るような極端なダイエットはしないようにします。

ステップ4(5日間)

ウォーキングなどの運動を取り入れてみる。

ステップ5(5日間)

身体が欲しているもの(例えば、野菜、ごま油など)を意識しながらそれらを取り入れて食事をしていく。

「食べたもの記録」を見ると、食事のとり方や好みが変わった自分を発見することができます。

レコーディング・ダイエットは著述家の岡田斗司夫氏の『いつまでもデブと思うなよ』で広く知られるようになりました。