脳卒中とは「脳の血管が詰まったり、破れたりして、いろいろな脳の症状が現れるすべての状態」をいいます。

血管が破れるのは「脳出血」と「くも膜下出血」に大きくに分けることができます。脳の血管が詰まるタイプは「脳梗塞」といわれます。

脳梗塞は、「クラナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳梗塞」に分けることができます。

2016年の人口動態統計では、脳卒中による死亡は年間約11万人であり、がん、心臓病、肺炎に次ぐ死因の第4位となっています。

脳卒中データバンク(2015)によると、脳卒中のうち、75%は脳梗塞、残り25%が脳出血(脳内出血とくも膜下出血を合せたもの)となっています。

 

日本の人口(2010年、約1億2700万人)をもとに推計された、2015年の初回脳卒中発症患者数は約33万人です。

1.脳出血

脳出血は脳内出血ともいいます。こういった方がイメージしやすいかもしれません。

高血圧があると、動脈に絶えず高い圧がかかるため、動脈壁、とくに脳の奥深いところにある細い動脈の動脈壁がもろくなって弾力性がなくなり、こぶ状にふくらんできます(動脈硬化による微小動脈瘤)。この部分が高い血圧に耐えきれなくなって破裂し、脳出血をおこすと考えられています。

出血する場所によって、視床出血、被殻出血、皮質下出血、橋出血など呼び名がありますが、最も多いのが「被殻出血」で、6割くらいを占めます。

<被殻出血>

被殻は、脳の中央部に位置しており、左右ふたつあります。強化学習に役割を持っていると見られています。

被殻の内側には、運動や感覚をつかさどる神経が通る内包という部位があります。被殻に出血がおこると、内包に血液が入り込んだり、内包を圧迫して、顔面や手足のまひ(運動麻痺)、半身の感覚が鈍くなる(感覚麻痺)などの症状が現われます。

被殻の外側は、言語、行動、理解、認識などの高次機能をつかさどる神経細胞と連絡路でつながっています。

このため、左大脳半球に出血すると、ことばが出せない、しゃべれても意味をなさない、人のいうことが理解できないといった失語症が現われることもあります。

右大脳半球に出血すると、左半側の空間にあるものを無視する半側空間無視がおこることもあります。

被殻のみの小さな出血では本来、麻痺は起こりません。ほとんどの場合、被殻から少し外側にある内包へ出血し、その部分の障害で運動麻痺と感覚障害がでてくるのです。出血が大きいと、顔と両目が出血した側(手足の麻痺が左なら右側)へ向いて自分では治せない状態になり、意識障害が進んできます。

 

<視床出血>

視床出血では運動麻痺も起こりますが、むしろ感覚障害が強く出ます。視床には感覚をつかさどる中枢があるためです。慢性期になって出血と反対側の手や足が非常に痛くなる場合があります。これは視床痛といい、鎮痛薬が効きません。この場合、定位脳手術といって特殊な手術を行う場合があります。それ以外に視床出血では左右の眼球に異常が生じます。寄り目になったり、両目が下に向いて動かなくなったりします。血腫が内包におよぶと、力は入るのに手足を思うように動かせない(運動失調)、手足や手の指が意思に反してひとりでに動く(不随意運動)こともあります。ろれつが回らないといった言語障害なども現われてきます。

また、視床の内側には脳室があり、脳幹部や脊髄、大脳の表面とつながっているので、血腫が脳室にまでおよぶと脳室内に血液がもれ出し(脳室穿破)、意識障害をおこしたり、眼球が鼻先を見つめるように下を向いたりします。

高齢者に多い病気で、寝たきりの原因となり、痴呆にもなりやすい病気です。

 

<皮質下出血(脳葉型出血)>

頭の位置と機能の面から、大脳半球の表面に近いところは、前頭葉(ぜんとうよう)、頭頂葉(とうちょうよう)、側頭葉(そくとうよう)、後頭葉(こうとうよう)の4つの部分に分けられていて、ここに出血がおこるものを皮質下出血といいます。

高血圧が主要な原因とはいえないタイプの脳出血で、脳動静脈奇形、海綿状血管腫、脳動脈瘤、静脈洞血栓症、脳腫瘍、アミロイド血管症、頭部外傷、出血をおこしやすい血液の病気、薬物など様々な原因で発症します。

 

<橋出血>

脳のもっとも奥深い、大脳と脊髄をつないでいる脳幹にある、橋という部位で出血したものです。高血圧のほか、脳動静脈奇形、血管腫、脳腫瘍が原因のこともあります。

橋は、脳幹といわれる部位の一部で中脳や延髄とともに生命中枢といわれ、意識、呼吸、体温調節、嚥下などの機能をつかさどる大切な部位です。

大脳半球の出血と比べると意識障害が現われやすく、呼吸の抑制、体温の異常な上昇、嚥下障害がおこることがあります。また、手足のまひや感覚障害もおこることが多いです。

橋には、眼球を動かしたり、顔や口を動かしたりする脳神経や中枢があるため、眼球の位置や動きが障害されたり、瞳孔が極端に小さくなったり、大脳半球の出血に比べて、よりひどく顔がゆがんで、ろれつが回らなくなるのが特徴です。

 

<小脳出血>

もっとも多い原因は、高血圧です。

しょう脳出血は、突然のめまい、頭痛、吐き気、嘔吐などを引き起こします。

軽症であれば、意識は障害されず、手足のまひもおこりませんが、小脳は運動全体をコントロールしている部位なので、立ち上がろうとしても立てなかったり、歩けなかったりすることがよくおこります。また、出血した側の手足に運動失調がおきたり、小脳性言語障害といわれるろれつの回りが悪くなる症状がでることもあります。

血腫が大きい重症例では、初めは意識がはっきりしていますが、しばらくすると、血腫が脳幹部を圧迫するため徐々に意識状態が悪化し、手足のまひが現われ、呼吸が不規則になります。

2.くも膜下出血

くも膜下出血は、脳の外側に位置するくも膜の下の層を走っている脳動脈に瘤ができ、その瘤が破裂することによって起こります。くも膜と脳の間に出血して脳を圧迫します。

突然に発症することがほとんどで、激しい頭痛と吐き気が起こるのが一般的です。危険因子として高血圧・喫煙・最近の多量の飲酒、家族性などがいわれています。

また動脈瘤が破れた瞬間には脳の圧がきわめて高くなり、脳に血が流れない状態になります。意識を失うこともあります。さらに圧の高い状態が続くと、脳自体に損傷が加わって、意識が戻らない場合もあります。

クモ膜下出血と並行して脳内出血を伴うこともあり、手足の麻痺や言語障害を伴う場合もでてきます。

3.脳梗塞

<ラクナ梗塞> 

脳の中でも奥の方の細い抹消の血管がふさがって起きる直径1. 5 cm以下の小さな脳梗塞で、危険因子として、高血圧、加齢などがあります。

ラクナとは小さな穴を意味します。いわゆる小梗塞で、3ミリから5ミリの梗塞が大半を占めます。

拓南梗塞は脳梗塞の半数近くを占め、日本人では一番多いタイプです。脳の細い動脈が高血圧で痛めつけられながらも破れずに長期間を過ぎると、だんだん詰まって、脳の深い部

分に小さな梗塞ができます。この小さい梗塞は、症状を出さないことも多く、その場合を症状のない梗塞、すなわち無症候性脳梗塞といいます。

高齢者に多く、症状はゆっくりと進行します。意識がなくなることはなく、夜間や早朝に発症し、朝起きたら手足のしびれや言葉が話しにくいという症状で気づくというケースも多いです。小さな脳梗塞でもその数が多くなると脳の中の神経網が切断され情報処理がうまくできなくなり認知症状の症状が出てくることもあります。

 

<アテローム血栓性脳梗塞>

脳への血管へつながる頚動脈や脳の動脈など比較的太い血管で発症することが多いタイプの梗塞です。動脈硬化によって動脈壁に沈着したアテローム(粥腫:じゅくしゅ)のため動脈内腔が狭小化し、十分な脳血流を保てなくなった状態です。また、アテロームが動脈壁からはがれ落ちて末梢に詰まったものもアテローム血栓性に分類されます。

アテロームは徐々に成長して血流障害を起こしていくことから、その経過の中で側副血行路が成長するなどある程度代償が可能で、壊死範囲はそれほど大きくならない傾向があります。また、脳梗塞発症以前から壊死に至らない程度の脳虚血症状(一過性脳虚血発作、TIA)を起こすことが多く見られます。

危険因子は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などです。

<心原性脳梗塞>

心原性塞栓症は、心房細動などの不整脈、心臓弁膜症などが原因で心臓の中にできた血栓が飛んで脳の血管をふさいでしまう脳梗塞です。ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞に比べて大きい病巣ができるため、症状が強いことが多く、生命が危険な場合も多くなります。仮に一命を取りとめても言葉が出なくなったり 手足の麻痺などの重篤な後遺症を残したりすることがあります脳梗塞の15~20%がこの心原性脳梗塞といわれています。

心原性脳梗塞は前ぶれもなく突然発症することと梗塞範囲が広いことが特徴です。

正常な心臓に血栓ができることはありませんが、心臓の機能がおとろえたり、リズムがおかしくなったりすると、血流が乱れ血栓ができます。

心房細動になると心房が細かなけいれんするように小刻みに震えて、規則正しい心房の収縮ができなくなります。このため心房内 の血液の流れがよどむことで、主に左心房の壁の一部に血の固まり(血栓)ができ、これがはがれて心臓内から動脈に沿って流れて、脳 の中の大きな血管を突然閉塞するのが心原性脳塞栓症です〈図3〉。心房細動がある人は心房細動のない人と比べると、脳梗塞を発症する確率は約5倍高いといわれています。

心原性の脳梗塞は、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞に比べて、突然大きな血管が詰まるため梗塞を起こす範囲が広く重症かつ場合によって命に関わるだけでなく、仮に一命を取りとめても言葉が出なくなったり 手足の麻痺などの重篤な後遺症を残したりすることがあります〈図4 上段〉。一般住民を対象に50年以上続けられている福岡県の『久山 町研究』では、同じ脳梗塞であってもアテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞を発症した患者さんに比べ、心原性脳梗塞症の患者さんの5年 生存率は非常に低いことが分かりました。

脳梗塞で使用したイラストは「NO!梗塞ネット」から引用