心臓も働くためには酸素や栄養素が必要です。それらを心臓の筋肉へ運ぶ血管が冠状動脈です。冠状動脈には、太い3本の枝があり、心臓の回りを王冠のようにめぐっています。

動脈硬化や血栓などで冠動脈が狭くなり、血液の流れが悪くなると、心臓の筋肉に必要な酸素や栄養がいきわたりにくくなります。急に激しい運動をしたり、強いストレスがかかると、心臓の筋肉は一時的に血液(酸素、栄養)不足となり主に前胸部、時に左腕や背中に痛み、圧迫感を生じます。正常の冠動脈は、必要があれば安静時の約4~5倍まで血流量を増加させることができ、これは冠血流予備能と呼ばれています。これができなくなった状態が虚血性心疾患です。

虚血性心疾患の主要な疾病が狭心症や心筋梗塞です。

加齢によって動脈硬化は進んでいきますが、それ以上に血管の老化を進める要因として、肥満、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常など、多くの要因が関係しています。これらが複合的に重なって、動脈硬化が促進されていきます。

(図は一般社団法人動脈硬化予防啓発センター「血管健康クラブ」HPより)

①は正常な血管です。外膜、中膜、内膜からできており、内膜の表面は内皮細胞でおおわれています。

②は加齢や生活習慣病でプラークがたまってきたところです。冠動脈のような中型動脈では内腔の狭窄を起こし、狭心症や心筋梗塞の発症に直接関係してきます。

③は血栓ができて血管が詰まったところです。

コレステロールでできたプラークが破れると、傷を修復するため、血小板が集まってきて血餅が作られます。これが血栓と呼ばれるもので、血流が完全に妨げられると、その先の組織に酸素や栄養が行き届かなくなり心筋梗塞を起こします。 

狭心症

心臓の血管が狭くなって血流が不十分になると、「心筋虚血」の状態となります。

虚血状態になると、前胸部に強い痛みや締めつけ感、圧迫感を感じるようになります。これが狭心症です。

痛みはほとんどの場合、前胸部中央や胸全体で、まれに首、背中、左腕、上腹部に生じることがあります。冷や汗、吐き気、おう吐、呼吸困難を伴うこともあります。ただし、この症状は長くても15分以内に消えてしまいます。

発作のとき以外は心電図は正常な状態を示します。

狭心症が疑われる場合、発作時の状態を調べるため、運動をしながら電図をとります。これを「負荷心電図」といいます。

狭心症の治療は、薬物療法が基本となります。

ニトログリセリンには冠動脈を広げて心臓の負荷を減らし、心筋虚血を改善する作用があります。ただし、ニトログリセリンは血圧も下げるので、倒れても差し支えないように、座った状態で口に含みます。ニトログリセリンは狭心症の場合は効きますが、心筋梗塞になるとなかなか効果はありません。

しかし、薬を使っても日常の生活で狭心症が簡単に起こるようなときには、冠動脈造影検査を受け、冠動脈バイパス術や“風船療法”が必要かどうか検討することになります。

動脈硬化が原因となる狭心症を「労作性狭心症」といい、運動したり、重いものを持ったりした時に、心臓に負担がかかり起こります。運動時や歩行時、駅の階段をのぼるとき等に出現し、休むと症状がおさまります。

血管のけいれんを起こし一時的に狭窄となって起きるものを「安静時狭心症(血管れん縮性狭心症・異型狭心症)」といいます。深夜や明け方の就寝中等、安静にしていても起こります。

心筋梗塞

心筋梗塞は、冠動脈が完全にふさがり、心筋に血液が流れなくなった状態です。心筋が壊死し、重症の場合は死に至ることもあります。

動脈硬化におかされた血管の壁は非常にもろくなり、壁の一部が剥がれてその先の血管が詰まってしまうと、血流が妨げられます。血液不足の状態が30分以上続くと、心臓壁の一部は酸素や栄養分が補給されなくなって壊死します。死亡率は全患者の12~30%程度です。

心筋梗塞になると、胸の強い痛みや圧迫感が出現し、持続します。狭心症の痛みと似ていますが、より激しく長く続き、ニトログリセリンを使用してもほとんど軽減しません。一部の人(糖尿病、高齢者)では胸痛がみられないこともあります。

最初に狭心症になってその次に心筋梗塞になるというわけではありません。

初めて感じた胸痛が急性心筋梗塞だった、という人が、心筋梗塞を発症した患者全体の7割を占めます。動脈内壁の粥腫(プラーク)の破綻(破れること)は、中等度の狭窄度で最も生じやすいことが報告されています。狭窄度が中等度の病変では心筋の虚血は発生しません。したがって、その状態では無症状で自覚症状がありません。そこに血栓が生じて血管内腔をほぼ埋めつくしてしまい冠動脈血流が急速に著しく減少して初めて自覚症状を感じるわけです。そのため、「突然、胸の痛みに襲われる」ということになるのです。