歯周病は口の中だけにとどまるものではありません。歯周病と他の疾病の関連がわかってきています。

1.ED

性的な刺激を受けると、陰茎海綿体の動脈が大きく拡がり血液が流れ込んできて勃起します。これがうまくできていない状態がEDです。

要因のひとつとしてストレスがあります。ストレスの種類にはふたつあり、ひとつは人間関係、経済的な問題などの現実に直面しているストレスです(現実心因)。

もうひとつは、過去の出来事などが心の深いところにとどまっていて、それが要因となっている場合です(深層心因)。

EDはほかにも、糖尿病、高血圧、脂質異常症などで血管に問題があるとよく発症します。生活習慣病は血管をいため、動脈硬化へと進行していきます。EDになるリスクが高くなります。

EDには心因性のものと器質性のものに2大別されているわけです。両方がかかわっていることもあるでしょう。

歯周病菌も血管の内皮細胞に悪影響を与えます。

歯周病は単に口の中の病気ではなく、歯周病菌によって生まれる炎症性物質が血流に乗って体内を駆け巡り、全身の血管や臓器を傷つけるといわれています。

2012年の「米国泌尿器科学会年次集会」の報告によれば、ED男性3万3000人とEDでない男性16万2000人を対象に調査を行なったところ、ED患者が歯周病に罹っていた割合は27%で、EDでない人の罹患率9%でした。

歯周病菌が全身の血管を傷つけている可能性が高いのです。

2.バージャー病

難病に指定されている疾病で、手足の動脈に閉塞が起き、血流が悪くなって、指先の冷感やしびれ感、蒼白化が見られます。

間欠性跛行(長く歩くと痛くなる)、激しい痛み(安静時疼痛)、さらには潰瘍を形成して、ひどいときには壊死に陥ることもあります。

30代から40代の男性がほとんどで日本では10,000人くらい患者がいるようです。

東京医科歯科大学で患者14人を調べたところ全員が中程度以上の歯周病にかかっていることがわかりました。そして、患部から取り出した血液試料の大半から歯周病菌が発見されました。

バージャー病には歯周病がかかわっている可能性が高いと考えられています。

3.糖尿病

糖尿病の人は歯周病になりやすいことがわかっています。一方で、歯周病になると、インスリンの働きに影響を与えて血糖コントロールが悪くなることがわかっています。

中等度以上の歯周病の場合、歯周ポケットの表面積の合計は掌と同じ程度と考えられています。

ポケットから出て血流にのった歯周病菌が産生した炎症関連の化学物質は、インスリンを効きにくくします(インスリン抵抗性を高める)。そのため、糖尿病が発症・進行しやすくなるのです。

逆に、糖尿病の人が歯周病の治療をすると糖尿の症状が改善されます。

歯周病の治療をすると、血中のHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)が減っていることがわかりました。HbA1cとはヘモグロビンがブドウ糖と結合したものです。血中のブドウ糖が多ければ多いほどHbA1cは増加します。

また、インスリンの働きを阻害するTNF-αの量も減少していました。歯周病になると、歯周病菌により炎症性サイトカインの1つで、インスリンの働きを低下させるTNF-αの産生が促進されるのです。

歯周病の治療は、糖尿病にも良い影響を与えるのです。

つまり、糖尿病の治療と歯周病の治療を同時に進めることによって

◆HbA1c(解説)

赤血球に含まれるヘモグロビン(タンパク質の一種)は酸素と結合し、酸素を全身に運ぶ働きがあります。

血液中に糖が過剰の状態だと、ヘモグロビンと糖が結合する確率が高まります。糖と結合したヘモグロビンを糖化ヘモグロビンといいます。糖化ヘモグロビンには何種類かあり、糖尿病と密接な関係を有するものが、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)です。

赤血球の寿命は120日です。いったん糖化ヘモグロビンになったら元には戻りません。

高血糖であればあるほどHbA1cも多くなるわけです。

血液中のHbA1c値は、赤血球の寿命の半分くらいにあたる時期の血糖値の平均を反映します。血液検査をすると、その日から1~2か月前の血糖の状態を推定できることになります。

検査で出てくる数値HbA1cは糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で存在しているかをパーセント(%)で表したものです。

糖化ヘモグロビン÷すべてのヘモグロビン で計算します。

NGSP(測定の方法のひとつ)で正常値とされる値は、5.6%未満で6.0%以上のときは東京病の疑いがあります。

◆TNF-α(解説)

成熟脂肪細胞で産生される腫瘍壊死因子をTNF-αと呼びます。肥満時に産生量が増えます。TNF-αはインスリンの働きを阻害します(インスリン抵抗性)。結果、糖尿病や動脈硬化などのリスクを高めます

また、TNF-αは、脂肪細胞からのインターロイキン6(IL-6)の産生を促進します。

内臓脂肪で産生されたIL-6は門脈という血管を通して肝臓に流入してCRPの産生を促進します。

ところが、肥満度がそれ程高くない糖尿病患者であっても重度の歯周病を併発した場合、歯周局所の炎症反応が脂肪組織に波及し全身性に炎症反応が惹起されCRPの血中濃度が上昇することがわかっています。

※ CRP(C-リアクディブ・プロテイン)とは、体内に炎症が起きたり、組織の一部が壊れたりした場合、血液中に現われるたんぱく質の一種です。このCRPは、正常な血液のなかにはごく微量にしか見られません。

4.アルツハイマー

厚労省によると、認知症高齢者数は2012年の時点で全国に約462万人います。そして2025年には認知症患者が700万人を超えると推計しています。これは、65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症に罹患するという計算にあたります。

認知症におけるアルツハイマーが占める割合は6割くらいあります。

人体は歯周病菌に侵され、感染性歯周病となったときには、自己防衛として炎症反応を起こします。重度の歯周病患者では、そうでない患者に比べて、血中の炎症性物質(TNF-αなど)の濃度が高値を示すことが分かっています。歯周病は長期に渡って体全体に炎症が生じている状態、「慢性の炎症性疾患」ということができます。

アルツハイマーは、脳にアミロイドβというたんぱく質が蓄積することが原因として知られています。アミロイドβが脳内に蓄積すると、脳の炎症に関わる細胞が活性化されて脳内に炎症反応が生じ、結果として正常な神経細胞が破壊されて脳の萎縮が起こるとされています。つまり、アルツハイマーは「脳の炎症」が原因で起こる病気なのです。

すべての物質は脳内に入る際に、血液脳関門と呼ばれる「関所」を通過しなくてはなりません。これは、脳へ血液中の有害な物質が入らないようにして、神経細胞を防御する機構です。当然、人体に細菌感染が生じた際に作られる炎症性物質も、容易には脳内に侵入できないわけですし、歯周病菌も入ることはできないはずです。

ところが、長期に亘って血液脳関門が攻撃を受けると、次第に正常に機能できなくなってしまい、炎症性物質が脳内に侵入してしまうことがあるのです。

口腔内に潜んでいるはずの歯周病細菌が、脳内へ侵入していることがあるのです。アルツハイマー病患者の脳から歯周病の原因細菌が見つかっています。

歯周病菌が脳内に入ることによって、アルツハイマー型認知症における脳の炎症がさらに増幅されるという状況になって、アルツハイマーの病状が進行することになります。

しかし、今のところ、歯周病による炎症反応だけで、アルツハイマー型認知症が発症するとは考えにくいとされています。

歯周病菌は、認知症の発症時期を早めたり、認知障害の程度を強めたり、進行を早めるという作用があると考えられています。

逆のいい方をすれば、歯周病治療や口腔ケアをすることで、アルツハイマー型認知症の発症予防や、症状の軽減、進行を抑制できる可能性があるということになります。

アルツハイマーにおいて歯周病が問題となる理由が、もうひとつあります。それは、「歯を失う」というということです。物を「噛む」という行為が脳への刺激となって脳の活動において極めて重要働きをします。

歯を失い物が噛めなくなると、脳への刺激が減少して脳の働きに影響が生じ、その結果として、アルツハイマー型認知症のリスクが増してしまうのです。

アルツハイマー型認知症の高い発症率を示す年齢層は、70歳代です。しかし、アルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβの脳への蓄積は、発症する10~15年以上前から始まっていることがわかっています。そのため、認知症の発症予防のためには、ひとつの方法として、若いころからの口腔内のケアが有効です。

50歳代の皆さん、歯周病には気を付けましょう。