1 体脂肪

体脂肪とは「皮下脂肪」「内臓脂肪」を合わせた脂肪全体を指すものです。
家庭用体重計で体脂肪を測定することができますが、脂肪全体を測定しています。
測定時に体に微弱な電流を流し、その抵抗値を計測して脂肪や筋肉率などの体組成を推定しています。
この方法は、BI法(生体インピーダンス法)と呼ばれています。
「脂肪は電気をほとんど通さないが、筋肉や血管など水分の多い組織は電気を通しやすいという性質」を利用して、脂肪とそれ以外の組織の割合を推定するものです。
電気抵抗性が大きいと「体脂肪が多い」ということになります。

2 皮下脂肪と内臓脂肪

皮下脂肪は皮膚の下、腹筋など筋肉の上につきます。内臓脂肪は、内臓回り、特に腸管の周囲から付き始めます。
同じ脂肪ですが、体に与える影響は大きく違います。

おおざっぱに言うと、皮下脂肪は、余計な脂肪をつけて動くことになるので、ひざなどに負担がかかります。また、高血圧の原因にもなりますし心臓にも負荷がかかります。

それよりも怖いのは、内臓脂肪です。内臓脂肪は動脈硬化に直結します。
腹囲が一定以上(つまり、内臓脂肪の蓄積が多い)で、同時に「高血圧」、「脂質異常」、「高血糖」の3つのうち2つ以上が該当していれば『メタボリックシンドローム』となります。放置しておけば動脈硬化が進行して、いずれは、脳血管疾患、心臓疾患、糖尿病へと進行していくことになります。

3 内臓脂肪

内臓脂肪とは腹筋の内側の壁である腹腔内についている脂肪のことを言います。腸間膜からつき始めるのでおなかが出てきます。女性よりも男性に多く見られることが特徴です。標準体重でも、おなかだけプクッと出ている人は注意です。
以前は「恰幅がいい」などといわれていましたが、つきすぎた内臓脂肪は諸悪の根源です。
皮下脂肪に比べ内臓脂肪は代謝(合成と分解)が盛んです。余分な栄養があると脂肪を合成して蓄え、不足すると分解して血中に移行します。

(1)アディポサイトカイン

内臓脂肪からは様々な「生理活性物質」が分泌されています。これを「アディポサイトカイン」といいます。
適度な量の内臓脂肪からは、インスリンの作用を高める「アディポネクチン」や食欲を抑え太りすぎにならないようにする「レプチン」が分泌されて健康体を維持しやすくなっています。

しかし、過剰な内臓細胞が付いてしまうと、アディポネクチンやレプチンの分泌が減少し、代わりにインスリンの効き目を弱くする「TNFα」が増えてきます。

「PAI-1 (パイワン)」も多く分泌されるようになります。PAI-1は血栓ができたときにそれを溶解する善玉の「プラスミン」の働きを妨げ、血栓を大きくするという悪さをします。プラスミンの前駆体のプラスミノーゲンは肝臓で合成されて血管中に分泌されて循環しています。

血圧を上昇させる働きのあるアンジオテンシノーゲンも増えます。
アンジオテンシノーゲンは主に肝臓でつくられますが、脂肪細胞でもつくられており、内臓脂肪が付きすぎるとそれに伴ってその産生・分泌が高まり、血中濃度が増加します。血管中を循環している過程でアンジオテンシンⅡに変わります。

アンジオテンシンⅡは強力な末梢血管収縮作用をもつほか、副腎皮質でつくられるアルドステロンの分泌を促します。アルドステロンは血中のカリウムを排泄させてナトリウムの再吸収を促進し、血液の水分量を増やすため、血圧を上昇させます。

アディポサイトカインの分泌異常は、糖尿や高血圧を促進し動脈硬化の進行を促すことにつながっていきます。

<アディポネクチン>
血管の傷を修復する働きがあり動脈硬化を予防します。インスリンの働きを高め血圧を下げる作用があります。
内臓脂肪が増えると、アディポネクチンの分泌が減り、動脈硬化を防ぐ働きが低下します。またインスリン抵抗性が大きくなり血糖を上昇させます。インスリン抵抗性とは、インスリンの効き目が弱くなる状態のことです。

<レプチン>
食欲を抑える働きがあり、内臓脂肪が増加すると分泌が高まって食欲を低下させ、エネルギー消費を亢進し肥満を防いでいます。
しかし脂肪がたまりすぎると、レプチンの分泌が過剰になっても満腹中枢が適切に反応しない状態となります。これをレプチン抵抗性といいます。実際、肥満症の人の血中のレプチン濃度は、正常な人よりも高くなっています。
レプチン抵抗性が増すと食べ過ぎ、太りすぎになっていきます。

<TNFα(ティエヌエフアルファ)>
インスリンの働きを妨げる作用があります。内臓脂肪が増えると分泌が高まり、インスリン抵抗性をもたらします。その結果、糖尿病を引き起こしたり悪化させる一因になります。

<プラスミン>
血栓を溶解する主役となるのが、プラスミンというタンパク質です。
プラスミンは、ふだん血液の中で不活性なプラスミノーゲン(プラスミンの前駆物質)として存在しています。血液中でフィブリン血栓が生ずると、プラスミノーゲンアクチベータ(PA)と呼ばれる血液中のタンパク質分解酵素がプラスミノーゲンに作用して、これを活性型のプラスミンに変えます。プラスミンは血栓に反応してフィブリンを分解します。この働きで、血管中の血栓が溶解され、詰まらないようになっています。プラスミンは血管の修復に寄与しています。

<PAI-1(パイワン)>
内臓脂肪の増加とともに分泌が高まり、血栓ができるとそれを融解させるプラスミンの働きを妨げ、血栓を大きくし、血流をさえぎる状態をつくります。メタボリックシンドロームでは、脂質異常症・高血圧・糖尿病があって動脈硬化が進行しますので、そこに血栓のできやすい状態が加われば、心筋梗塞や脳梗塞の危険が高まります。

<アンジオテンシノーゲン>
血圧を上昇させる作用のアンジオテンシンの分泌を高めます。内臓脂肪がたまると分泌が増加して、血圧を上昇させ、高血圧を招く一因となります。

(2)LDLとHDL

内臓脂肪は遊離脂肪酸とグリセロール(グリセリン)からできています。中性脂肪が分解されて血中に遊離脂肪酸が放出されると肝臓に取り込まれます。肝臓では中性脂肪とコレストロールが合成され、リポ蛋白と結合しVLDL(超低比重リポ蛋白)となります。VLDLは全身に中性脂肪を配って歩き、肝性リパーゼなどによってLDLに代謝されます。LDLは末梢組織にコレストロールを供給します。役目を終えたLDLは肝臓に回収されます。

一方で、コレストロールを抹消組織から引き抜いて肝臓に戻す「逆転送系」が存在します。中心となって働くのがHDLです。
LDLとHDLの割合が正常であれば血中の中性脂肪もコレストロールもうまくコントロールされます。
しかし内臓脂肪が過剰に蓄積し、血中にVLDLやLDLが血中に多量に存在しバランスが崩れ「脂質異常」の状態になると、血管が傷つき始めます。

LDLが増えすぎると血管壁にできた細かな傷からLDLが入り込み動脈硬化巣を作ります。
そしてVLDLが多いとLDLが微細化して「超悪玉LDL」となります。超悪玉LDLは動脈硬化巣に入り込み、動脈硬化を急速に進行させます。その結果、放置すると、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。

 

(3)脂質異常症

血中の脂質には、中性脂肪、コレストロール、遊離脂肪酸、リン脂質などがあります。これらは細胞膜やホルモンの原料になり、血管を丈夫にする働きもあります。
これらは、通常、一定の割合に保たれていますが、そのバランスが崩れ血中のコレストロールや中性脂肪が多くなりすぎるとコレストロールが血管壁に入り込んで、動脈硬化を引き起こすこととなります。

脂質異常症を簡単に言うと、「LDLが多すぎる」、「中性脂肪が多すぎる」、「HDLがすくなすぎる」という状態です。
脂質のバランスを崩す原因は「食べ過ぎ」「運動不足」、その結果としての「肥満」です。遺伝的体質もありますが、中でも食事での脂質の取りすぎが大きいとされています。

診断の際には「LH比」も重要な要素となります。

「LDLコレステロール値÷HDLコレステロール値」で算出します。

LH比が2.5以上だと動脈硬化や血栓のリスクが高くなります。
・ほかの病気がない場合は ➡ 2.0以下
・高血圧や糖尿病がある場合、あるいは心筋梗塞などの病歴がある場合 ➡ 1.5以下

4 内臓脂肪解消のために

改善の第一歩は肥満を解消することです。
極端なダイエットは、よけい、体を壊したり、リバウンドでさらに太ってしまったりすることがあります。

脂肪

かかり付けの病院があるときには医師に相談するがよいでしょう。
肥満外来を利用するのもよいかもしれません。
よほど意志の強い人だったり、何か大きな出来事のあったときなどは、継続的に減量できることもありますが、多くの人が思うようにいきません。

内臓脂肪の蓄積は、食べ過ぎと運動不足が大きな原因ですが、何を食べすぎているのか自分ではわからないこともありますし、運動をどうすればよいのかわからないこともあります。
肥満外来だと、ひとりひとりの肥満の原因を見極めて、フィットした減量方法を指導してくれます。状態によっては保険診療できます。

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例えば、高血圧症を伴っているとかBMIが35以上の高度肥満などのときには保険がききます。
カウンセリングを受けるだけでも違うかもしれません。

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