腸管には全身の免疫細胞の多くが集結しています。その割合は、50%とも70%ともいわれます。

食べ物と一緒に細菌やウィルスも入ってくる可能性があります。有害なものは免疫で排除します。

ところが腸内には有益な細菌も住んでいます。それらの細菌は免疫で排除されません。どのような仕組みなのかはよくわかっていませんが、腸は選択的に異物を排除しているのです。

(1)小腸の免疫細胞

下の図のように、小腸の内側には絨毛が多く生えています。表面に粘膜上皮細胞が並び粘膜を分泌します。鎖の表面には細かな微絨毛がびっしりと生えています。

絨毛には毛細血管とリンパ管が分布していて、毛細血管からはアミノ酸やブドウ糖が吸収され、リンパ管化からは脂質が吸収されます。

絨毛と絨毛の間隔が少し開いたところにM細胞が存在し、この上には微絨毛は生えていません。これは免疫に深くかかわる細胞として知られています。

M細胞の下方には、パイエル板と呼ばれるリンパ組織が存在します。

パイエル板には樹状細胞、T細胞、B細胞などの免疫細胞が多数集まっています。

絨毛の粘膜上皮細胞の下の粘膜固有層には、プラズマ細胞が並び、粘膜上皮細胞を通して、抗体を腸内へ分泌しています。腸内といっても、腸壁の内側の粘液層に溶けこますような感じです。

M細胞には受容体があってポケットに流れてきた細菌やウィルスを取り込んでいきます。M細胞のポケットには樹状細胞も潜り込んでいて、早速免疫応答を始めます。

活性化した樹状細胞は、パイエル板のナイーブヘルパーT細胞に抗原提示をし、ヘルパーT細胞は活性化します。

パイエル板内のB細胞も抗体を取り込み少し活性化した状態です。そこを、活性化したヘルパーT細胞と結合して、B細胞は完全に活性化します。

その結果、プラズマ細胞となって抗体を分泌するようになります。

ここで注意したいことは、B細胞がクラススイッチをするのはIgA、というところです。

全身免疫の場合には、抗体のクラスがIgMからIgGやIgEへとクラススイッチしていきますが、腸管内ではIgAなのです。これが腸管免疫の大きな特徴です。なぜ、IgAなのかはよくわかっていません。

IgAは粘膜上皮細胞を通して腸管内の粘液層に放出されます。そして抗原特異的に流れ着いた病原菌やウィルスと結合して中和し機能を停止させます。

最終的には、病原体ともども体外へ排出されます。

粘膜固有槽の中にはIgGもいますが、これはIgAでは防ぎきれずに中に侵入してきた抗原に対応するためと考えられています。

(2)経口免疫寛容

食品に含まれるタンパク質は、ヒトにとって異物であり免疫応答の対象となりますが、口から食べて入ってくるタンパク質に対しては免疫反応が抑えられる現象を経口免疫寛容といいます。

アミノ酸まで分解されると抗原にはならないのですが、そこまで分解されずに吸収されるものもあります。そういうものに対して免疫応答が働かないのです。

さらに、経口免疫寛容が成立しているタンパク質に対しては、口からの摂取なくても免疫反応が起きないという現象が知られています。

免疫寛容の仕組みはよく分かっていないのですが、制御性T細胞がかかわっていると考えられます。

制御性T細胞とは、自己反応性のナイーブT細胞が活性化した樹状細胞に結合できなくするために働くものでした。

ナイーブT細胞が樹状細胞に結合する前に、制御性T細胞がくっついて邪魔をするのです。

経口で無害なたんぱく質が入ってきたとき、自己反応性のT細胞の動きを阻止するのと同じように、免疫応対が起きないように制御性T細胞が動き、ナイーブT細胞の活性化を防いでいると考えられます。

また無菌マウス(腸管内も無菌)では、経口免疫寛容は成立しないことから、腸内細菌も深くかかわっていると考えられています。

例えば、腸管粘膜固有層には、17型の活性化ヘルパーT細胞が多く、その割合は全身の箇所と比べても非常に大きくなっています。

それは腸内細菌の一部がナイーブヘルパーT細胞から、1型でもなく2型でもなく、17型に分化するように誘導しているのです。

また、ナイーブT細胞から制御性T細胞への分化を促す腸内細菌も発見されています。

このように、腸内細菌抜きには、腸管免疫について語ることはできないのです。しかしその全容については不明点が多いのが現状です。

(3)腸内細菌と免疫攻撃

腸管内に住み込んでいる細菌類は1000種類以上、総数は1000億個を超えるといわれています。

人体から見たら異物です。ではなぜ、免疫に攻撃をされて排出されないのでしょうか。

粘膜上皮細胞のパターン認識受容体(TLR)に位置に注目です。

食細胞やB細胞では細胞の表面にTLRが生えていますが、腸管の粘膜上皮細胞では図のように、粘膜固有層側に向けて突き出ています。

このため腸管の内側表面に細菌が取りついても免疫反応は起きないことになります。

また、腸内細菌は鞭毛を体の中に隠したり、細胞壁の構造の一部を変えたりしてTLRに引っかかりづらいように工夫しているとも考えられています。

ただ、IgAによっては排除されていきますので何らかのバランスを取る仕組みがあるのかもしれないとも考えられています。

いづれにしても、腸内細菌が免疫の攻撃を受けない理由はよくわかっていません。

腸管は、免疫系として働くだけでなく、ホルモン系、神経系としても機能しています。これらの系統を総合的に探査していかなければ、腸管にまつわる神秘は解明できないでしょう。