(1)内在性リガンド

リガンドというのは、細胞が持っているTLR(Toll like receptor、パターン認識受容体)と結合する特定の物質のことでした。

自然免疫はTLRで感染したことを感知し発動するもので、一般的に外来性の物質がリガンドと考えられていました。

ところが、TLRが認識するのは外来性のものだけではなく、自身の成分の一部もリガンドとして認識することがわかりました。

それらの自己成分を「内在性リガンド」といいます。

つまり、マクロファージや好中球などが、病原体だけでなく自己由来の成分を食べても活性化し、炎症を起こすことになります。病原体の関わらないこの炎症を「自然炎症」と負います。

細胞がアポトーシスで死んだ場合、DNAやRNAはすぐ分解されてしまうので食細胞のパターン認識受容体に認識されることはなく、活性化もしません(炎症なし)。

しかし、ネクローシスの場合は、細胞から飛び出たDNAやRNAが分解されずにそのままパターン認識受容体までたどり着きます。そうすると食細胞は活性化して炎症が起きます。(自己由来の組織に反応するので)自然炎症です。

自然炎症は、本来、細胞や組織の修復のためになされる、と考えられています。

しかし、それが異常に活性化するとき、負の側面が現れます。

近年、自然炎症が注目されているのは、アルツハイマー、動脈硬化、痛風、糖尿病などとかかわっているのではないかと考えられようになってきたからです。

痛風の原因は、尿酸塩です。尿酸の濃度が高い状態が続くと、この尿酸塩が結晶化して足の親指の付け根など関節の内面に沈着してきます。

次に、この結晶(自己由来の物質)を異物とみなしたマクロファージが内部に取り込んでいきます。食細胞には、パターン認識受容体のNLRP3があります。この受容体がストレスを感知するとインターロイキン1β(IL-1β)というサイトカインを出します。このサイトカインが炎症を誘発するのです。これが痛風の痛みの原因です。

アスベスト(石綿)やシリカも結晶様の物質です。それを食細胞が食べてインターロイキン1βを放出し炎症を起こし、じん肺や珪肺を引き起こすと考えられます。

(アスベスト、シリカは外来性の抗原です。内在性のリガンドではありません)

脳に沈着したβアミロイド繊維内在性リガンドとして炎症の原因となります。これもインターロイキン1βは放出されるためです。その結果、脳細胞が死滅していき、アルツハイマーが発症します。

コレストロールも体内で結晶化します。これを血中の食細胞が食べて同じように、インターロイキン1βを放出し炎症を起こし、動脈硬化の原因となります。

体内で結晶化した物質に対してマクロファージは取りつきますが、一般的には消化しきれず死んでいきます。そうすると別のマクロファージがやってきて取りつき、消化しきれずにまた死んでいきます。これが繰り返されて炎症がどんどん大きくなってきます。消化分解できない結晶はは自然炎症を活発にしてしまうのです。

(2)ふたつのマクロファージ

マクロファージといえば、異物を食べたり炎症を起こしたりする白血球、という理解が行き渡っています。このようなマクロファージは「M1型」に分類されるマクロファージです。「M2型」のマクロファージはM1とは逆に、炎症を抑え組織の修復に寄与したりします。M2は病原体をやっつけという働きはなく、体のいろいろな組織と交流してその働きを助ける役割をしているようです。

これらのマクロファージは極性化という環境に応じて、M1型からM2型へ、またはその逆に変えることが知られています。

M1は、高い免疫活性を持っていますが、M1型の状態が長くなると正常な組織に障害を引き起こしてしまいます。

しかし、M2に変われば「免疫」活性が抑制されるため、その危険を避けることができます。

免疫と炎症の関係は下のようになります。

自然炎症が行き過ぎると炎症性の疾患を引き起こし、獲得免疫系に誤作動が起きると、自己免疫疾患を引き起こすと考えられます。